中村 真一郎編 「恋愛について」 岩波文庫別冊

本書はポケットアンソロジーである。なので軽く読めるしつまらなかったらやめればいい。
なにより編者がいい!ということで、手にとって読んでみた。

……結果。どれもおもしろかった(あ。いやこれは嘘かも。ひとつだけわけのわからないのがあった 苦笑)


以下が目次


愛の鎖からどう抜け出すか  森 瑤子
アイスル・アイシナイ  富岡多恵子
幸福な夫婦   大庭 みな子
愛と結婚に関する六つの手紙   倉橋由美子
愛は幾度可能なのか   瀬戸内寂聴
失恋とは恋を失うことではない   谷川俊太郎
男性のドン・ファン的心理について 遠藤 周作
愛と性   吉行淳之介
女性論に対する一つの視点  梅原 猛
性の隔離   作田 啓一
愛の試み(抄) 福永 武彦
恋は隷属ではない/処女論  中村真一郎
現代の恋愛論(抄) 椎名 麟三 
女について 武田 泰淳
見惚れ、気惚れ、底惚れ  円地 文子
近代日本における「愛」の虚偽 伊藤 整
チャンス 太宰 治  
恋愛論 坂口 安吾
恋愛について 石川 淳  
現代の恋愛論について  中村真一郎

著者紹介 底本・初出一覧


編者によれば、年代の新しいものから古いものの順に作品を並べているそうである。恋愛を肉体と精神に分けて述べる人、愛とはそもそも日本語の訳としてどうかと問う人、自分の経験を交えて語る人…。それぞれに「恋愛」ということばをめぐり、作家の思うところが述べられていて興味深かった。


個人的には、福永武彦氏の文章に非常に共感した。その内容は、孤独/内なる世界/失恋/愛の試みと四つに分かれている。どちらかというと、はじめの二つは恋愛というより人の営みが述べられておりそちらのほうが心に残った。

学生時代に福永氏の著作を一冊だけ読んだことがあるのだが、「なんて暗いひと。なんて静謐な文章を書く人なんだろう。絶対自分には合わないな」とわが身の未熟さを棚に上げて思ったものだが、時を経た今彼に共感してしまう自分って…と少々複雑な気持ちにさせられた。まあ、それだけ自分も年を重ねてきたのか。。。と少々カナシイ気持ちにもなりました(苦笑)。


また、坂口安吾氏の語り口調がいい!全然分野は違いますが寺田寅彦氏を想起しました。彼の著作ももっと読んでみたいですね!


女性陣では、今回は倉橋氏のは私にとってはイマイチでした。手紙形式で書かれているのですが、いまひとつイメージできず。富岡多恵子氏、大庭みな子氏らがよかった。とくに大庭氏はなかなか深かったです。女性必読!?


このようにアンソロジーに触れることで、気になる作家さんを見つけられるのはなかなか楽しい経験でした!
まるで、ケーキビュッフェに来たみたいでした♪