中島 京子著 「女中譚」 朝日新聞出版

中島氏初読みです。

記事を書く前に本書を返却してしまったので、なけなしの記憶をたぐりよせながらこの記事を書いています(汗)。

本書は三篇の短編からなっています。読み始めたときはバラバラのお話かと思っていたのですが、違うことがわかり点と点がつながって線となりました。


タイトルの顕す通り「女中」である「ばあさん」が語る(譚)のだが、どの話もある人に捧げる(尊敬などの気持ちを表す)話となっている。というのも作品の最中に名前が出てきたり、最後に作者によってそれが記されていたりするからわかるのであるがー。


一つ目の作品が<ヒモの手紙>。。。林 芙美子(元話「女中の手紙」)
二つ目が<すみの話>。。。吉屋 信子(元話「たまの話」)
三つ目が<文士のはなし>。。。永井荷風…(元話「女中のはなし」)


最後にそれが明かされるので、読みながら例えば<文士=永井荷風>の人となりを作品から思いうかべる作業が面白かった。トリビュートされている元の話を読んでいないので、読んでいたほうがおそらくこの本をもっと楽しめるのではないかと想像した。(元の話が何なのかはネットで調べてわかった次第です)。


またその頃の女中とか女給などの扱い、時代背景などが垣間見られて興味深かった。最近<昭和初期>に思いを馳せる経験がかなり少なかったのである意味新鮮な感じさえした。


すみばあさんがメイド喫茶でひとり語りを始めた時には少しだけ引いたが(苦笑)、だんだん引き込まれていった。想像だにしない方向に話が進んでいくのでー。また、すみさんのパワー溢れる行動力がなんともいえず小気味よかった。


個人的には、永井荷風の『墨東奇譚』を読んでみたくなった。