河合 隼雄著 「こころの読書教室」 新潮文庫

河合氏の本をぼちぼち読んでいこう…と思っていたのだが、一気読み!
やっぱり河合氏の本は面白い。いい意味で刺激を受ける。
本書読了後、読みたい本がまた増えてしまった(苦笑)。


本書は、4章立てになっており、各章5冊の課題図書(まず読んでほしい本)が挙げられている。なので本書の中で、4×5=20(冊)の本が紹介される。それらについて河合氏がどう読むかが述べられている。また、課題図書以外に「もっと読んでみたい人のために」という本が、これまた各章5冊紹介されているので、4×5=20(冊)。ということで、合計40冊の本が河合氏によって挙げられている。


……どれも読みたい!!


中には、読んだことのある本もあるのですが、再読してみたくなりました。河合氏の視点を取り入れながらー。


挙げられてる本は、物語、児童文学、絵本、民俗学、心理学、哲学など様々。どんな視点で挙げられているかと言えば、第一章が「私と“それ”」。第二章が「心の深み」。第三章が「内なる異性」。第四章が「心ーおのれを超えるもの」。※第一章の“それ”とは、無意識を指す※


臨床心理学者であった著者なので、全ては「こころ」に通じています。(これもタイトル通り!)


心に残った箇所を覚書。

<昔話は、わりと単純な話なのに、なんであれが残るのかというと、あれは単純化されているけれども、心の非常に深いところとつながっていて、長ーい歴史の中で洗練されて残ってきているだけに、単純そうに見えながら、深いところとかかわりがあるんだと、私は思っています。>


<まとまっている自我という世界だけで完結しているんじゃなくて、もっと深い世界がある。この深い世界へ降りていくときに、道化とかトリックスターというのがすごい大事だということを、僕らは臨床心理学の問題として学んでいたのです。>


<王様というのは、道化がいないと成り立たない。王と道化は対なんですね。><この道化というのは、お芝居には欠かすことができません。昔の芝居を見ると、必ず道化が出てきて、メチャクチャやってるように思うけど、そのことによって話が展開するんですね。カチッと出来あがっているものが展開しよう思ったら、どこか壊さねばならない。あるいは変えねばならない。しかし、「うちはダメだから」とは言えないわけですね。そこが難しいんで、「うちはちゃんとしておりますが、道化のバカが変なことするから……」と言いながら、だんだん変えていく。道化はそういう役割をしています。><だから、山口さんは、両義性ということを強調します。ものすごいバカなこと、「もう、悪いやつや!」という面と、ものすごくいいこと、意味のあること、その両方をやるやつがいないといけない。だから、道化というものはすごく大事なんだと。>

※山口さんというのは、『道化の民俗学』を書かれた山口昌男氏のことを指します※


<道化は、下手すると殺されるんですよ。命がけの仕事なんです。また、王様は都合の悪いときは、「俺はやってない。あいつがやったンや!」言うて、道化を殺したりするんですね。道化というのは命がけで、うまくいけば大成功、失敗したら殺される。もっとつまらんときは、ただ悪戯してるだけか、ただオモロイだけ。><道化というのは、赤と白を半々に近づけられた服を着たりしていますが、それは、見方によっては赤に見えるし、見方によっては白に見えるというふうに、角度を変えて物事を見てみたら、ぜんぜん違うじゃないかということをわからせるためです。>



最後にもう一つ。ルーマー・ゴッデン著『ねずみ女房』についてのくだりからー。

<ほんとうに素晴らしいと思うのは、「あれが飛ぶことなんだ!わかった!」というのと、「ハトがいなくなる」というのとが一緒なんですね。>

<人間ていうのは、ほんとうに大事なことがわかるときは、絶対に大事なものを失わないと獲得できないのではないかなと僕は思います。何かを得るために何かを失わねばならない。失うのが惜しかったら、やっぱり獲得できない。>


『ねずみ女房』も再読決定です!