追悼 山崎 豊子展〜不屈の取材、情熱の作家人生〜

過日、某百貨店の催事場で行われた山崎豊子展に行った。

とても良かった。そして圧倒された。

取材ノート、取材テープの量たるや半端ない。人生をかけている。直筆の構想メモや取材メモなどから、熱を感じた。細かく小さな字。字が連なっていることから、頭の中に浮かんだことを素早く書いているのか。

また、戦争中の「日記」。これがまたすごい。本音が書かれているので、読みごたえがある。(少々罪悪感を感じずにはいられないが。)


数々の名作を生み出していられるが、そのテーマの着想が、ご自分の生活から生まれているというのが心に残った。

例えば「白い巨塔」ならば、ご自分が病気で入院した大学病院での体験から。
例えば「華麗なる一族」ならば、年末年始に志摩の某ホテルに宿泊して執筆している際に、レストランに毎年顔を見る一族が居て、その面子に違和感を覚えたことから、調べ始めテーマが決まったとのこと。


また、吉野を舞台にした小説の冒頭に「桜が咲く(散る?)」シーンを書くために、秘書の方に吉野まで桜の映像を撮るなど取材させている。人物を描くのならば、個人の年表を作る。家を描くのならばその間取り。土地を描くのならば、大きな地図に建物などを記入している。


さすが、元新聞記者!

事実に基づきながらも、山崎氏の想いや理想が小説の中に織り込まれ、いつのまにかモデルとされている人の生き方にまで影響を与えている。モデルご本人がまるで、山崎氏の理想像に近づこうとしているかのようにー。


まだ、山崎氏の著作は全部読み切っていない。読む愉しみが残っている。

だが、それを読み終わると、もう次はない。


ゆっくりゆっくり味わいながら読んでいきたい。