武良 布枝著 「ゲゲゲの女房」 実業之日本社

タイトルの横に赤字で<人生は……終わりよければ、すべてよし!!>と書いてある。

本書は、NHK朝の連続テレビ小説ゲゲゲの女房』の原案だそう。自分はテレビドラマは見ていないが人気番組だったそうである。

たしかに、本書を読んだだけでも水木しげる氏の生き方にはひきつけられるものがある。

そして、漫画家水木しげるを支える奥様の立場から本書は書かれている。気取りがなくさらりと本音が書かれていて、好感がもてる。
時々うるうるとくる。

「貧しい時も病める時も…」夫であり漫画家である水木氏と共に、歩み支え奮闘する姿にこれこそ「愛」だなあと思わされる場面が多々ある。

夫が不遇の時も売れることをこころから「信じる」。「絶対の味方」になる。これができるのはすごいことだと思うし水木氏はある意味しあわせ者だと思う。
絶対の味方を得られることは人生においてそうそうない。基本的に親以外(例外あり)。

そして、水木氏だけではなく著者もまたご自分のことを“しあわせ”だと思っているところがいい。


「私じゃない人と結婚してたら、どうだったのかなぁ」
 以前、富士山の小屋に行ったときに、水木に聞いたことがありました。水木は小首をかしげた後に、空を見上げ、ポツリといいました。
「よかったんじゃないか、おまえで。いつもぼんやりしていて」
「ぼんやり?私、ぼんやりしてる?」
「とんでもなく、ぼんやりだ」
「そうかなぁ」
「ああ。横を見ると、いつもおまえがぼんやりと立ってたな」
(本書P.238より引用)


この部分を読んで、ふと先日読んだ河合氏と茂木氏の対談を思い出した(12月6日のダイアリー参照のこと)。

臨床心理学者の河合氏が、相手の話を聞くときに<まっすぐ聞く>のだと言う。しかも<中心をはずさずに>。その人の本当に動かしている根本の<「魂」だけを見る>。そうすることによって、相手が自分ひとりで変わり治ってくる…というようなことを述べられていた。


このようなことをゲゲゲの女房さんもされていたのかなと思ってしまった。
いつもそばにいる(物理的だけではなく)。いてくれるという安心感はなにものにもかえがたい。

こころあたたまる本でした!