諸田 玲子著 「恋ほおずき」 中央公論新社

諸田玲子氏の著作初読みです。
タイトルに「恋」なぞとついているので、ちょっとドキドキして読み始めました。ついていけなかったらどうしよう…と思いながらー。


本書、実に読みやすく、主人公の江与に共感できました。
彼女は、「中條流婦人療治」という看板を掲げる女医師。平たく言えば堕胎医である。


<幕府は正保三年、江戸幕府ができてまだ五十年もたたないうちに、江戸における堕胎を禁止した。寛文七年には子堕ろしの看板が厳禁となり、延宝期には堕胎医と依頼人の双方を処罰する触書が発布された>という。


そのような時代背景のなか、彼女がほのかに恋心をよせるのが、子堕ろしを取り締まる奉行所の定廻り同心…清之助である。


相対する立場でありながら、惹かれあう二人。だからこそ相手の考え方にも耳を傾け、自分の偏りに気づき考えを広げていく。
この清之助。妻も子もいる。この二人の恋はどうなるのかー。
ここでは言わぬが花だろう。読む楽しみが減じてしまうので。



恋の結末が納得できるかは個人の思いによるだろうが、自分としてはこの二人の距離の縮め方に好感がもてた。
相手に媚びることなく自分の考えはしっかりと持ちながらーむしろ対決する構えをもちながらもー破綻せず関係性を保っていくという難しいことをやっている。


また、本書には伏線が随所にひいてあり自然と話が流れていく。文章も非常に読みやすい。


その頃の女性の立場や生き方にも思いを馳せることができ、今の時代に女性として生きていることに感謝の念を抱いてしまった。