小野 不由美著 「くらのかみ」 講談社

小野 不由美氏の著作初読みです。
奥付の次頁に<かつて子どもだったあなたと少年少女のためのー“ミステリーランド”>とあり執筆人がずらりと紹介されている。そのなかの第一回配本として掲載(広告)されている。

なるほど。だから実に読みやすかったのかと思う。


本の装丁を見れば<少年少女向け>というのは伝わってくるが。というのも挿画・挿絵が村上勉氏。佐藤さとる氏の著書(「コロボックル物語」シリーズ)の挿絵などで見覚えのある人も多いのではないだろうか。

また中身は文章とともに挿絵あり、メモあり簡単な地図あり。昔読んだ「少年探偵団」(江戸川乱歩著)を想起した。


夏休みに、田舎の本家に集まった親戚一同。相続権について大人たちはケンケンガクガク。その間子ども達だけで過ごす。死人あそび、座敷童子など古くて大きな家の奥座敷で子どもたちは不思議な体験をするところから物語が始まる。その後、毒を食した大人が倒れるという事件が起こり、そのことについて子どもたちは疑問を出し合い、知恵をしぼりながら犯人探しをしていく。

そもそも子ども達は全部で何人いるのか?という素朴な疑問からスタートするのだが、犯人を見つけるまでそれぞれの意見を言い合う。その会話が中心となって話が進んでいく。たまにその話をまとめた相関図や家系図や家や沼の配置図などが挿入されわかりやすく話を整理してくれる。


話がごちゃごちゃにならず、「どうしてそうなるのか?」「なぜ起こったのか?」「こういう考えもあるのでは」というような子どもたちのやりとりが面白い。そこに大人にはなりきれず<子どもグループ>に入れられてしまった<三郎>が重要な役割を負ってかかわってくる。子どもだからといって侮れない推理力を発揮する。またその子ども達の考えを受け止めてくれる大人がいるという設定もよかった。


ラストでは<お金>と<幸せ>についても考えさせられる。子どもから見た<大人>という存在についての考察も面白い。


ひとつの事件をある面から見たり違う方向から考えたりする、子ども達の様子がいきいきと描かれていてよかった。