人間ドック

人間ドックの場所を選択できるとしたら、人はどんな観点で選ぶのだろうか。

最新機器のある所?きれいな施設?交通の便の良い所?

人さまざまであろうが、自分の場合機器の新しさもさることながら、「どこで昼食を食べられるか」という点が非常に大事なことである。


日帰りドックの場合、早い時間からスタートして午前中には一通り終わる。そしてお待ちかねの昼食である。

なんといっても前日の午後8時から何も口にしていない。水一滴もだ。しかも当日の朝は<ごはん抜き>である。食い意地のはっている自分にとってはかなりつらい。

しかも、採血(血管がみつけにくい!)、胸部エコー(これが痛いんだ!)、バリウム(やたらぐるぐる回された!)、婦人科検診(あの恥ずかしい格好!)、直腸検診(これは初体験 汗)と修羅場をくぐり抜けて晴れて「ランチ!」である。

おいしいものを食べようじゃないか!!

これだけを励みにつらい検査をくぐりぬけたのだ。


そしてここのクリニックのロケーションがいいのである。

某ホテルの昼食券がつく!ということでこのクリニックに決めたのだ。



炎天下、そのホテルに向かって歩き4つのランチメニューの中からひとつを選んだ。

さすがホテルのレストラン!静かだし、大きなガラスの外には池があり赤や黒の鯉が悠然と泳いでいる。

おいしくランチをいただき、食後に珈琲を飲みながらひとり優雅に(?)お昼のひと時を過ごした。しかも珈琲のおかわりが自由だった。

都会の真ん中でそんなお店があるのね。ラッキー♪と思っていた。

だがそこまでだった。ラッキーなのは……。



会計!の段になり茶色の革の伝票を手に取り、レジへと進む。ちらっと中をのぞいたら、自分が注文した食事の正規の値段が書いてあった。

(え〜。こんなにするんだー)と思いつつ「お食事券があるもんね♪」と思い伝票を差し出した。


スーツを着た男性が「500円になります」と告げた。

(えっ。珈琲の値段はそれより安かったよ。確か390円……)と思ったら

「あ。すみません。間違えました」

(そ、そうだよね。ほっ)

「差額分を合わせて800円になります」

(はーーー!?どうしてそうなるんだーーー!差額分ってなんだーーー!?)

と内心あせりながら、もしかしたら聞き間違い!?と思いつつ千円札を一枚差し出した。

「はい。110円おつりですね」

(ってことは890円支払ったことになる……)



釈然としないままホテルを去りクリニックに戻った。検査結果を医師から聞くためだ。

道々ゆっくり考えてみた。

「差額分、差額分…。自分が選んだメニューは高かったのか…。それなら店員さんもそれを告げるかメニューにひとこと書いておいてくれてもいいんじゃない!!」

とぷりぷりしながらクリニックのソファに座った。

そしてもう一度、受付でもらった昼食場所とメニューの書かれた紙をじっくりと眺めてみた。


(んげげげげーーー。書いてあったーーー。大きくしっかりとーーー!)


<○○ホテルの下記の3つのレストランでは500円の負担が必要となります>


B5の紙の右半分の上部に矢印で囲んであった。



がっくりきているところで、医師との面談。

検診結果を見ながら「動物性脂肪を制限すること」とのお達しがー。


……ああああー。今お肉食べてきてしまったよ……。


「お肉の食べ納め!」ということで今日のところは自分をねじ伏せて帰宅したのでした。


食い意地が張っていて「食事場所」と「メニュー」しか見ていなかった自分がナサケナイ…。