山崎 豊子著 「華麗なる一族(上)(中)(下)」 新潮文庫

重かった。実に重いストーリー。そして何といっても読みごたえがあった。

阪神銀行頭取の万表大介の野望の遂げ方が細かに描かれていた。銀行業界は未知の世界であるので、なるほどそうやって人を懐柔するのかとか、そうやって官僚やら政治家を利用しながらシナリオを作っていくのかとか、自分の会社に有利になるような閨閥づくり(姻戚関係を取り結んでいく)をしていくのか…などある意味感心しながら読んでしまった。彼の人間性はともかくとしてー。

大介の長男、阪神特殊鋼専務の鉄平が彼と対比的に描かれている。祖父に酷似している鉄平に対する大介の複雑な思い。ニヒルな銀行家の次男、銀平。華族出身で家ではなんの実権も持たない母、寧子。三人の娘一子、二子、三子。万表家の一切を取り仕切る高須相子。

この一族はどうなっていくのかというのを縦糸にして、阪神銀行の合併話。阪神特殊鋼の存続の危機を丁寧に描いていく。

抑圧され必死で生きる男性が山崎作品にはよく登場するが、ラストでスカッとすることもある。今回はどうなるのか…。ここでは言えないが、なるほどそうもってきたか!と唸らされた。


通勤ラッシュが苦にならないくらい、夢中で読めました!ありがとう山崎豊子先生。


<追記> 今『小説ほど面白いものはない 山崎豊子自作を語る3』(新潮社)を読んでいるのだが、本作品の誕生エピソードが語られていてなかなか興味深いです!著者紹介を読んでいたら新たな発見が!新聞社に勤務していたということは知っていたのですが、当時毎日新聞<学芸部副部長であった井上靖のもとで記者としての訓練を受ける>とありました!そのようなつながりがあったのですね。