「風立ちぬ」②

風立ちぬ」の映画を観ました。映画の最後に流れる曲「ひこうき雲」の音楽とともにじわじわと涙が流れてきました。(この映画に合わせて作詞作曲したのではないかと思うくらい「ひこうき雲」がぴったり合っていました。ユーミンが高校生の時に作った曲だそうです。)


ほとぼりがさめたところで、こころに残ったことを覚書。
大きく分けると三つあります。



一つは、主人公の少年・二郎が自分の夢に向かって突き進む姿。
一つは、主人公の恋人そして妻となる菜穂子の人となりと夫婦の描き方。
一つは、映画全体を通しての映像の美しさ。



まず二郎少年が「飛行機」に興味を抱き、先生に借りて外国の飛行機の本を読んだり、わからないことは辞書で調べたりして、どんどん深みにはまっていくところ。飛行機の設計に携わるようになり、「魚」の名前はわからないけれども(食にはあまり興味がないということでしょうか)、「さば」が好きでいつもさばを食べ、その骨を見て飛行機の尾翼の曲線を連想し「美しい」と言うシーンがこころに残りました。自分の興味のあること好きなことへ全身全霊をかけて取り組む二郎に好感がもてました。夢のシーンも面白かった!



次に菜穂子像。堀辰雄著『風立ちぬ』は読んだことがあったかなかったか…。(若かりし頃読んだと思うのですが、あまりぴんとこなかったかと思われます)。なので小説の中の菜穂子像と比較はできませんが、映画の菜穂子像は理想の女性ですね。何より賢いし、潔いし(行動力もある!)、思いやりがある。自分の持ち時間をわかっていてどうふるまえば相手に負担をかけずにすむかということが考えられる。すごい人。



二郎とのやりとりで好きなシーンは二つあります。ひとつは二郎が菜穂子の気配を感じて、せせらぎ沿いの小道をずんずん進んでその先で、菜穂子と再会します。そこで菜穂子が二郎に何と言うかと思ったら「いま泉にお礼を申しておりましたの」という言葉!。汽車の中で「風」によって飛ばされた帽子を二郎が受け止めてくれたこと。震災の時に助けてもらったこと。それらのことや二郎のことが彼女の心の中にずっとあったことがうかがい知れます。



もうひとつは、ふたりが夫婦となり病床の中で二郎に言う言葉。「一生懸命仕事をしている二郎さんを見ているのが好き」(すみませんうろ覚えです)。そして手をつなぎたいと言い、二郎は片手で仕事を続けるというシーン。じーんときました。お互いがお互いを思いやっていることが伝わって来ます。



最後に美しい映像。森林の中で光が差し込むところ、大地震が起きて地面が揺れるところ、風がふき物が動くところなどどれも素晴らしく引き込まれました。



日本が戦争へとつき進んでいこうとするとき、「飛行機を作る側」の視点でその時代を見ることはありませんでした。技術的にも経済的にもたち遅れている日本という国が、どのようにして飛行機を作っていくのか。海軍との関係はどうだったのかなど興味を持ちました。


本映画は、零戦が完成しそれが戦争中どう使われていくのかということまでは触れていません。きっとテーマがずれてしまうからなのでしょう。飛行機を作ること=戦争への加担。そんな時代の中で自分がやっていることに「矛盾」を感じながらも「いいもの(飛行機)を作ろう」と懸命に生きている人たちの姿がよかったです。