河合 隼雄著 「河合隼雄自伝 未来への記憶」 新潮文庫

帯に「生きるヒントに満ちた唯一の自伝」とある。
まさに、その通り!。

今まで河合氏の著作を読んできたが、ご自分のことをあまり語ったものはなかったなということに本書を読んで気付かされた。河合氏の本の内容に興味・関心があり、河合氏の人となりに興味がなかった…というわけではないのだが、内容が面白いのでそちらに引き込まれてしまい個人的なことはあまり考えもしなかったというのが実状だ。(断片的にご自分のエピソードや体験を語ることはあり、それを読んではいたのだが)。


けれども、ずっと心の中で引っかかっていたことがあった。


というのは、かれこれさかのぼること○十年。学生のころ氏の書いた『コンプレックス』(岩波新書)という1冊の本との出合いがあった。わかりやすく、非常に納得できるものであった。それからずっと氏の著作は主に単行本で買って読み続けてきた。(一時期読めない時期あり)。


なぜ、これほどまでの人が(略歴を見ても申し分ない!)「コンプレックス」というものが、よくわかるのだろう?とずっと疑問に思っていた。(しかもかたい文章ではなく非常にわかりやすく書いてある!)


その疑問が本書を読んで解けました!するするとー。


そして、河合氏ご自身もコンプレックスがあったことが明かされます(そんな大げさなことではないか…)


生い立ちや生育歴を垣間見ることができ、子育ての参考になったり、失礼ながら笑ってしまう場面もあったりで、本当に興味深い本でした。氏の懐の深さみたいなものは、このような体験・経験があってこそなのだな、とつくづく思わされました。本当に本当に凄い方です。


「一生、高校の教師として生きていく」と就職した青年が、どうしてアメリカに留学し、その後スイス・ユング研究所に行くことになったのか。またそこでの格闘ぶりは本当に引き込まれました。穏健な河合氏もやるときゃやるんだ!と思ったりもしました。



河合氏の著作で読んでいないものが書店で発見できたので、今後もぼちぼち読んでいきます!