他人事

他人事として聞いていた。


「今日、金曜日だと思っていたー。すぐに帰らなきゃ―。」

職場で、女性が大きな声で「曜日」を間違えたことを嘆いている。
明日が昭和の日で休み。だから、「休みの前日=金曜日」という発想だったらしい。


自分は、パソコンに向かって仕事をしていたので、耳だけで彼女のその言葉を聞いていた。というより、聞き流していた。「今日は木曜日だよね」と心の中で思いながら。彼女の顔も見ずに。ましてや、彼女に一言の声もかけずに。


のちのち考えると、その時に彼女になんらかの反応、いや優しい言葉のひとつもかけていれば、こんなことにはならなかったのだ、と思えることが起こった。


翌日、金曜日。午前中は家でシゴトをしていた。そして午後!
スポーツジムで走ろう!そう思って家を出た。週末(土日のどちらか)はたいていジムだ。


いつもの駐車場に止めた。
「あれ?いつも交通整理をしてくれる人がいない…。」という小さな違和感はあった。でも「道が混んでいないから、整理する人がいなくても大丈夫なんだ」と勝手に解釈して駐車場のゲートを入った。


でも、それはすぐに間違いだと気付いた。

一台も停まっていないのだ。


いや、正確に言うと、私の入る前に一台、車が入った。


仲間がいた!という安心感があった。

とりあえず、駐車した。


その車から、二人の人が降りた。なにやら封筒を持っている。入り口に向かって歩いていく。すぐに戻ってきた。そして、すぐに駐車場から出て行った。

やっぱりやっていないのか・・・。

ならば、駐車場に入ってしまっただけで、料金発生するよね?だったら・・・ちょこっと近くに用があるから、それを済ませてから、この駐車場から出よう。


・・・そんな下心が働き、いったん車を置いてその場を去った。


30分弱で用を済ませ、駐車料金を払って出ようとした。

「初めの○時間は、たしか○円だったよね!」と思って、小銭を投入した。

……開かない。ゲートが開かない。なぜ???……


駐車場機械の請求金額を見た。

請求金額が「5000円」になっているーーーー!!!

ええええーーーー。



おお。呼び出しボタンがある。押してみる。なんの反応もない。

あわてて車から降り、建物の方へ向かう。

入り口は無情にも「本日休館」の貼り紙。



他の入り口を探して、走った。その瞬間、建物から制服を着た人が出てきた。
事情を話すと、ゲートを開けてくれた。

ほっとして、スポーツジムを去ったー。




教訓:人の嘆きは、自分事と思え。



あのとき彼女に「今日は、木曜日ですよ〜」とフォローしておくなり言葉がけをしておけば、自分の脳が「週末の休み=土曜・日曜日」という思い込みを書き換えられたかもしれない(ぼそっ)。