倉本 聰著 「ニングル」 理論社

15センチほどのニングル。森に住む小人ー。そのニングルと人間との交流を描いたもの。

これは小説なのか。ルポなのか。

初めは著者の実際に経験した話をルポ風に書いているのだと思っていたのだが、だんだんこれはフィクションではないか?と思えてきた。


・・・・・・でも。もしかしたら実際に起こりうるかもしれない・・・・・・。


「森の時計はゆっくりきざむ(すすむ?)」(違っていたらごめんなさい!)という印象的な言葉がある。TVドラマ「優しい時間」の舞台となった喫茶店にある著者の言葉(だと思う)だ。


ニングルの平均寿命は250年から300年。80歳というとまだ青春。


その80歳のニングルが人間の女の子に恋心を抱き、人間の文明に触れ、知りたい!もっと知りたい!という好奇心のふたを開けてしまった。

そのことによっていろいろな情報を得、一種の躁状態となり歯止めがきかない状態に陥ってしまう。

結果、ニングルの掟を破りその代償として多くの仲間を失う。

自分も遠いところへと行かねばならなくなるー。


ゆっくり時間をかけて進むことの大切さ。こころがまだ準備段階にきていない時にいろんなものを取り入れる危険性を感じた。「知らなくてもいい」「知らない権利」があることを主張していたにもかかわらずー。


ニングルの語り口にリアリティがあり、目の前にニングルがいるような気になった。


ニングルと著者との別れのシーンが哀しくせつなかった。