羽生 善治著 「決断力」 角川oneテーマ21(新書)

将棋棋士の著作ではあるが、内容は将棋に限ったことではない。
将棋という真剣勝負を通して氏が大切だと思うことを述べられている。それは他の仕事においてもそして人生においても大切なこと。

勝負師らしく簡潔にキチッと言いたいことを述べられているので読んでいてすがすがしい。

以下が目次

第一章  勝機は誰にもある
第二章  直観の七割は正しい
第三章  勝負に生かす「集中力」
第四章  「選ぶ」情報、「捨てる」情報
第五章  才能とは、継続できる情熱である


自分が心に残ったところを引用。

<勝負の世界では「これでよし」と消極的な姿勢になることが1番怖い。組織や企業でも同じだろうが、常に前進を目ざさないと、そこでストップし、後退が始まってしまう。>


<全体を判断する目とは、大局観である。一つの場面で、今はどういう状況で、これから先どうしたらいいのか、そういう状況判断できる力だ。本質を見抜く力といってもいい。その思考の基盤になるのが、勘、つまり直感力だ。直感力の元になるのは感性である。(中略)将棋にかぎらず、ぎりぎりの勝負で力を発揮できる決め手は、この大局観と感性のバランスだ。感性は、どの部分がプラスに働くというのではなく、読書をしたり、音楽を聴いたり、将棋界以外の人と会ったり……というさまざまな刺激によって総合的に研ぎ澄まされていくものだと思っている。>


<若いころ、一人で考え、学んだ知識は、今の将棋では古くなり、何の役にも立たない。だが、自分の力で吸収した考える力とか未知の局面に出会ったときの対処の方法とか、さまざまなことを学べたと思っている。私は、自ら努力せずに効率よくやろうとすると、身につくことが少ない気がしている。近道思考で、簡単に手に入れたものは、もしかしたらメッキかもしれない。メッキはすぐに剥げてしまうだろう。>


<以前、私は、才能は一瞬のきらめきだと思っていた。しかし今は、十年とか二十年、三十年を同じ姿勢で、同じ情熱を傾けられることが才能だと思っている。直感でどういう手が浮かぶとか、ある手をぱっと切り捨てることができるとか、確かに個人の能力に差はある。しかし、そういうことより、継続できる情熱を持てる人のほうが、長い目で見ると伸びるのだ。>


本書を読んで知ったのだが、将棋の世界も日々進歩で新しい手というのはすぐに研究されてしまって、そうそう何度も同じ手は使えないそうである。