諸田 玲子著 「美女いくさ」 中公文庫
歴史を女の視点から見てみる。戦国の世では主役は男性。しかし、女(武将の妻)だって戦っている。
ここでいう「美女」とは織田信長の妹(お市)と三人の娘(茶々、初、小督)、そしてその娘御たちを指す。浅井家三女でありのちの豊臣秀吉の養女、徳川秀忠の正室となる小督(江)が本書の主役である。
彼女が他家へ嫁し家を守る。その重要な任務を背負って生きていく。そこに自分の意志はない。運命を受け入れていくしかない。
自分の意に染まぬことでも、相手に合わせながらしなやかにたくましくー。
その姿は母の背中でもあり、長姉の茶々の姿とも重なるものである。
「女子は嫁して子を生し、家を守るのがつとめ」
幼い(若い)時にはわからなかった(理解できなかった)ことも、自分が彼らと同様の経験をしてはじめてわかることがある。
そしてその時初めて、彼らの凄さをあらためて感じるものである。
伯父・信長の気性をうけつぎ「女弾正忠」と呼ばれた小監(江)。
慕っている人(初めての夫・佐治一成)をどこまでも追い求める。危険を冒してまで。そして自分の納得がいくまで。
しかし、もうこれはダメだ…と思った途端さっと身をひく潔さ。
そしてもう次のステップに身も心も切り替え動き出している。
江の母親への想い。姉達への想い。夫となる人への想い……それらの描き方が好感がもてた。
考え方が悲観的ではないのだ。どうにか自分を盛り立て、相手といい関係を保とうと努力する。もちろん苦手(嫌い)な人はいるが。
こころに残ったところを引用。
<たしかに女の結婚は戦いである。だが、祖母の土田御前はいっていた、生きることそのものが、すなわち戦いだ……と。>(P.390)
江と茶々との会話で、江が茶々に今まで大変でしたね。。。ということを言うと、茶々が<それによって「弱い自分を強くしてもらった」>と言う場面(ページがみつからずあしからずです)。
江の人物像ー。
9日から始まった大河ドラマとの相違点をみつけながら見る。これまた一興です。