諸田 玲子著 「お鳥見女房」 新潮文庫

登場人物が多い。多すぎる!(笑)。それなのに、物語が破綻せず流暢に流れていく。わかりやすい語り口。うまい伏線。

この話は現代でいうところの「渡る世間は鬼ばかり」(←橋田寿賀子脚本のテレビドラマです)。

今は亡き山岡久乃(一家の主婦)を中心に夫と4人の子どもたちがおり、それぞれに個性がありいろいろな問題をもってくる。ホームドラマ的展開である。

本書では一家(矢島家)の主婦の名は珠世という。彼女が中心となって話が展開していく。この珠世が温和でありながらしっかり者で人柄がいい。笑顔の似合う女性なのである。

そこに登場するのが、珠世の父親(久右衛門)、夫(婿養子)の伴之助。四人の子ども久太郎、久之助、幸江、君江たちである。


この矢島家は江戸郊外、雑司ヶ谷の組屋敷に住む、将軍の鷹狩りの下準備をする<お鳥見役>。この<お鳥見役>には裏の仕事があったー。夫は任地に旅立ち、珠世がその留守を預かり切り盛りしている。


そこにひょんなことから同居人が増えるのである。男性が一人。その子どもが五人。そして若い女性が一人。


テンポよく話が展開し、はらはらしたり、ほろりとさせられたりする。
そして最後にはさわやかな読後感と、ひとつの謎を残して終わる。


なので続きこのシリーズの第二弾『蛍の行方』がすぐに読みたくなるのである。