諸田 玲子著 「其の一日」 講談社文庫 

長かろうと短かろうと人の一生の中で、重要な転換点となるような忘れられない一日というのが存在する。
もしかしたらそれはその人のこの世との決別の日かもしれない。


自分自身を振り返っても、何十年も前のことなのに鮮明に残っている記憶がある。
それはまるでスローモーションのように何度も頭の中で再生される。


時代は江戸。
本書はいろんな人の「一日」という視点で書かれた物語を集めた短編集である。
<第二十四回吉川英治文学新人賞受賞作>とある。


以下が目次。

立つ鳥
蛙(かわず)
小(しょう)の虫
釜中(ふちゅう)の魚(うお)


緊張感のあるそぎ落とされた文章。引き込まれるが物語の中に没入はできない。短編だからか?以前読んだ著作より少々かたい感じがする。

個人的には「蛙」がなかなか怖かった。人の情念の強さのようなものを感じた。