宮崎 駿  半藤 一利 著 「腰抜け愛国談義」 文春ジブリ文庫

半藤氏と宮崎氏の約7時間余(2回に渡ってなされたとのこと)の対談をまとめたもの。

自分はジブリの作品は全部とは言わないが、観てきている。だが、今まで監督である宮崎氏個人にはまったくと言って興味がなかった。しかし『風立ちぬ』の映画を観て、主人公である堀越二郎像が宮崎氏と被って見えたあたりから、監督ご自身の人となりのようなものに、俄然興味を抱いた。


そんな時本書を読んだので、タイミングもあってかとても面白く読み進めることができた。


宮崎氏の少年時代、家庭環境(お父さまがなかなか個性的!)。そして半藤氏の半生、母親像。なかなか興味深かった。


また、雲や森や空をアニメ映画にする際の苦労話。今という時代は「となりのトトロ」(1988年公開)を制作した頃と比べると、都市近郊に「在来の草むら」がないという話。日本在来の植物がなくなり、帰化植物ばかりになり、草むらがあっても、ウマオイ、クツワムシがいなくなったというという話が印象に残っている。自分が子供の頃はそういう点では良かったのだなあ…と過去に思いをはせながら本書を読んだ。


「自然」の描き方に着目しながら「となりのトトロ」の映画をもう一度観てみたいと思った。そういえば、メイを探しにいくシーンはかなり鮮明に覚えている。夕暮れ、山道、沼、田んぼ、夕立などなど。


また、宮崎氏は本当に飛行機がお好きなことが本書を読んでよーくわかった。その部分だけは、違う方が話を受けた方が盛り上がったかもしれません。(半藤氏が「おわりに」で仰っている通り)。


お二人が夏目漱石がお好き(特に『それから』以前)だという共通点で盛り上がっているところが面白かった。『それから』を再読してみたくなった。また、『風立ちぬ』の主人公が、実在した堀越二郎氏と堀辰雄著『風立ちぬ』とのミックスなのだが、どのくらいの割合で作られているのかという裏話も聞けて(読めて)面白かった。


半藤氏の著作はまだ読んだことがないので(興味をもってはいたが)、読んでみたいと思った。