山崎 豊子著 『大地の子』と私 文春文庫

<取材と構想に3年、執筆に8年。「大地の子」はいかにして生まれたのか?>〜文庫本の帯より〜

本書を読むと著者がどれだけ苦労して苦労して『大地の子』を書き上げたのかがわかる。中国に滞在し取材を重ねる。多くの資料を読み込む。本当にすごい人ですね、山崎豊子氏という人はー。尊敬してやみません。


本書は作者がいろいろなところで対談したものや、取材をうけたもの、執筆したものなどをまとめたものである。なので、内容が重複している部分も多々ある。しかし何度でも読んでしまう。感嘆しながらー。


特に自分がこころにのこったのは、作者はいつも小説を書き上げ「完」の字を書くと、その小説に対する情熱を全部出し切って、収まっていたのだが、『大地の子』は収まらない。小説として完結していないのではないかと心配になって二回読み直した。まだ、陸一心が心の中に根づいている。心の中から陸一心に退いてもらおうとして、キリマンジャロに行ってみたがダメ。そこで、彼と同じ戦争孤児のためになることをやろうと思った。


……ということで具体的に何をしたか?


日本に帰ってきた戦争孤児の子供をせめて高校までだしてあげたい(大半の孤児たちは生活するのが精一杯で義務教育しか受けられない)。そこで、私財を投じて財団を作って寄付をするのである。(財団の最低基金が三億円)。自分の作品『不毛地帯』『二つの祖国』『大地の子』の著作権も財団に寄付。


著者はどの小説を書く時にも、「生き残った戦中派としては」という思いがあるそうである。日本の政治家がやらなければならないことを、個人として行っている。


大地の子』の裏話を知ることで、更に物語にどっぷりつかることができた気がする。徹底した取材、真実を書こうとする著者の思いが、『大地の子』の物語に説得力を与えていることがわかった。


今度は『大地の子』を映像で観てみたい。