村岡 恵理著 「アンのゆりかご」 新潮文庫
村岡花子といえば「アン」。中学生の時に読んではまった『赤毛のアン』の訳者である。
本の内容には興味を抱くが、訳者には全く無知であったし興味すら抱いていなかった(すみません)。名前は存じ上げているというレベル(しかし、夫に聞くと名前すら知らなかった)。
やはり「アン」は女性(少女)が通る道(はまるもの)なのでしょうか(笑)
なんてことはさておいて。。。
本書面白かったです!
孫娘の恵理さんが祖母である花子氏の評伝を書かれている。本書により赤毛のアンの誕生の秘話、翻訳だけでなく女性の生き方について考え活動していたこと、石井桃子氏、宇野千代氏、柳原白蓮氏らとの交友などを知り大変興味深かった。
『アン・オブ・グリン・ゲイブルス』を直訳すると『緑の切妻屋根のアン』となる。これを村岡氏は『窓辺に倚るアン』というロマンティックなタイトルに決めていたという。編集者が『赤毛のアン』と提案したのを絶対に嫌だと振り切ってー。
しかし娘のみどりさんにタイトルのことを話したら、確信をもって『赤毛のアン』がいい!ということになり、読者は若者であるのだから若い人の感覚に任せよう!ということで、原稿を印刷所に回す直前にタイトル変更となったということである。
翻訳というのは、英語力ばかりではなく、相当日本語のセンスがないと難しいものなのだと感じた。特に「タイトル」は大切ですね。
また、原作は花子氏が15歳の時にカナダで出版されているのだが、その本をミッションスクールの先生から渡されて、実に40年以上も後に日本で出版された。その間戦争があり、花子氏がその本を大切に抱えて防空壕に入ったなどのエピソードがこころに残った。
孤児の少女アンが成長する物語。そんな日常が綴られた平凡な物語。しかし、ありふれた日常を、輝きに変える言葉がちりばめられている。花子氏に言わせると「非凡に通じる、洗練された平凡」。
ドラマチックなことよりも、平凡な日常を描くこと。またそれを読者が引き込まれるように訳すことは並大抵の力ではないと思う。
赤毛のアン…再読したくなりました(笑)。