小山 薫堂著 「考えないヒント」 幻冬舎文庫

サブタイトルに<アイデアはこうして生まれる>とある。


ものすごく刺激された本でした。ここまで手の内をさらけだしてもいいの?と思うほどです。小山氏の頭の中身を少しだけですが垣間見ることができ非常に興味深かったです。


すごい人なのですね。でも外見からはそれを感じさせないおおらかさがある。人を緊張させないというか大きく包んでくれるイメージ。(勝手にすみません)


その理由が本書を読んで少しだけつかめたような気がします。幼少期の小山氏、お父様の教育方針のエピソードなども面白い。


自分が特に感銘を受けたのは、「金谷ホテル」の再建についての記述。社員の方一人一人に名刺を作り、その裏にホテル内の自分の好きな場所の写真を印刷。それを社員の人がお客さんに渡すのではなく、お客さん自らが欲しくなるような仕掛けをする。


その手とは……。(ここからネタバレなので本書を読もうと思う人は読まないでください)


そのホテルにポスターを貼るのですが……。


そこに書いてある言葉が……。


<皆さん、ご存じでしょうか。金谷ホテルのスタッフは一人ひとり違う写真のついた名刺を持っています。全部で三十種類。その三十種類を集めると、金谷ホテルの小さな写真集ができあがりますから、どうぞ、スタッフに声をかけて名刺をどんどんもらってください>


写真(名刺)を集めたくなりませんか?(笑)


自分なぞは「ポイントカード」なるものに弱く、毎月来ると1つスタンプがもらえ、○個ためると△をプレゼント!とかについひかれてしまう(苦笑)。


実際新しい名刺の一番のファンになったのは子どもたちだったそうです。未来の顧客ゲットだぜ!(ポケモン風に)


<子どもたちが、ホテル内を探索していろいろな人から名刺をもらうようになると、スタッフもだんだん慣れてきて、「すごくレアな名刺を持っているお兄さんがいるから紹介してあげるね」などと言って、厨房にいる皿洗いのお兄さんを連れて来たりするようになった。>そうです。



新しい名刺にすることでなにを意図していたのか?まず、スタッフのホテルへの愛情を確認すること。なので今まで名刺を持ったことのない清掃係の人や売店の人まで、全員に名刺を持ってもらった。もう一つが新しい名刺をきっかけにして、お客さんと積極的にコミュニケーションをとれるようにすること。そして顧客を一人でも増やすこと。とりわけ若いお客さんをとりこむということだったそうです。


他には誰でも参加できる経営会議を開く。会議は社員全員にオープンにしている。(ここら辺は、社長の井上氏の懐の大きさかと思いますが)。そこでフロントの若い男性から出されたアイデアを小山氏が形にしていく。など他にもいろいろな仕掛けが紹介されています。


ここでふと思ったのですが、<会社再建(経営)>で大切なのは、社員一人一人を大切にし、やる気をもたせるということなのだということ!。先日読んだ「海賊とよばれた男」の店主のやりかたに通じるところがありました。


本書は自分にとって、日常なにげなく見ている物事の「見方」に今までと違う光を当てる、その当て方を教えてくれる本でした。アンダーラインをもし引いていて読んでいたら、マーカーで真っ赤になるのではないかな。(つい先日立ち読みした本に、本は2回目に読んだ時にアンダーラインを引けと書いてありましたのでそのやりかたに準じてみました 笑)


そして最後に、本書購入の一番の決め手になったのは、「小山薫堂」という名刺を作る際に、
大ファンだった笠智衆さんに書いてもらった。<僕はずっと笠さんの大ファンで、名刺が必要になったときには笠さんに書いてもらおうと、大学一年の時から決めていました。>
というくだり。文章とともにその名刺の字が載っている!まだ放送作家になっていないころから決めていたとは…!


好きなものへのこだわり(情熱)がすごいなと思いました。夢見る力。信じる力!


手元に置いて再読したい一冊となりました。