百田 尚樹著 「モンスター」 幻冬舎文庫

読みごたえがあった。これまた満員電車のストレスを解消してくれる本でした!というか、電車に乗っていることすら忘れてしまう。

正直、読みはじめは主人公の女性の語り口と行動にギャップがあり違和感があった。しかし、ある事件をきっかけに彼女が変わる。そこから物語の世界にすっと入っていけた。


自分のコンプレックス(顔の醜形)を克服するために、目的を持ち、ある意味手段を選ばず、力強く邁進する女性。その手段の是非はあるだろうが、その女性の軸がぶれていないところにある種すがすがしさを感じた。


しかし、<美しくなる>という目的を達した<その先>。<その先>が彼女にはなかった。けれども、その目的が達成され、幸福を味わった一瞬。<その一瞬>を味わえたことが、彼女のすべてであり、幸福だったのかもしれない。


人にはいろいろな幸福の形がある。周りの人がどう見ようと、どんなに滑稽だと笑おうと、自分のこだわりを持ちづつけて歩み続ける。そんな主人公の力強さを感じた。


ただ、自分のしてきたことの功罪も十分承知であるがために、そのツケが回ってくることも意識していた。それが彼女の最期に現れていると思った。


個人的に心に残った場面は、主人公が初恋の人英介と再会した時に偶然を装って、好きな本が同じでその詩の一部を二人で暗誦し合うところ(具体的には、井上靖の現代詩「盗掘」)

それは英介でなくても、ウンメイ感じる…かもしれないと思いました(笑)。


整形手術の知識なども読んでいていろいろ勉強になりました!活用する予定はないけれども(笑)。