脇 明子著 「物語が生きる力を育てる」 岩波書店


本書は三年前に同出版社から出された『読む力は生きる力』(岩波書店)の第二弾ともいえる。内容は著者の考えの変化もありすこし色合いが変わっているように思われる。

著者はいう。

<いま私が、以前にも増して確信しているのは、子どもたちがちゃんと育つことこそが大切なのであって、本が読まれること自体が大切なのではない、ということです。>

そこからすべてを発想され、今子どもたちに必要なことはなにか。そのためにはどのような物語がふさわしいのかという観点から本書は書かれ、本を選定・考察・分析されている。実際に子どもたちに読み聞かせをしたときの反応や感想をもとに書かれているので説得力があった。

本書の目次は以下のとおり

はじめに
第1章 昔話の不思議な力
第2章 昔話のメッセージ
第3章 昔話から物語へ
第4章 感情体験の大切さ
第5章 物語で味わう自然
第6章 ゆっくりと、心にしみこむように
第7章 願がかなうことと成長すること
第8章 鳥の目と虫の心
あとがき
本書でとりあげた書目

最後に五十音順で書目の索引がついているのがなんともありがたい。

個人的には、翻訳ものの児童文学に触れた数が少ないように思われるので、今から読んでみたいものがみつけられとてもうれしい。

<生まれてくる子どもたちが持っている知性の種子を芽吹かせ、それを本物の人間的知性へとはぐくんでいく過程で、物語がはたす役割は非常に大きいものです>

まず、自分自身が物語の世界で楽しみ心を自由にさせること。その次に子どもたちへと渡していくことができたらいいと思う。