有吉 佐和子著 「青い壺」 文春文庫

最近「電子書籍」に興味があり、Kindleよさそう!とか思っていたのだが、本書を読んでやっぱり「紙媒体」も捨てがたい!と思った次第である。

題名の「青」い壺。その色をイメージさせてくれる表紙の青。そして「壺」という漢字の形のもつ神秘性。それらを目の前にすると「電子書籍」の情報というのが「文字」ひとつしかないことに気付かされた。「本」というのは、もしかしたら文章を読み理解するだけでなく、装幀とか行間とか全てトータルで「本」なのではないか。情報だけを得たいのならいいのだが、文学的な作品においてはそれらが喚起するイメージを得たいし、電子書籍では何とはなしにさびしい気がしてきたのである。


なんていう前置きはさておき…。とにかく面白い!!と大きな声で叫びたい。いや実際最終話では「ええーっ!こうくるー!」と思わず声を上げてしまった(自分の家だから大丈夫でしたが)。


本書は「青い壺」をめぐる十三の連作短編集。一人の陶芸家が生み出した「青い壺」が巡り巡る。わらしべ長者さながら、壺がさまざまな人の手に渡る。その人がどうやってその壺を手したのか、その人はどのような日常を送っていたのかを克明に描き出す。戦争が話にでてくることもあれば、学校給食が出てくることもあったり、老婦人の戦前の上流生活が描かれたり、スペインに帰郷する修道女も登場する。青い壺をキーワードにして多彩な世界を垣間見ることができる。

骨董品というものには興味があまりない自分であるが、古いものが残っているということはその物自身にも何らかの歴史があるのだということを感じた。一つの物にそのような物語があると思うと「骨董品」を得るというのもそれなりに面白いものなのかもしれない。

読後充実した気持ちで、自分の本棚の有吉作品に目をやると……なんと「青い壺」(文春文庫本)があるではないかーーーー!!
こんなオチまでついてしまったが、本書のオチもすごくいい。おススメです!

P.S.
家にあった文庫はかなり古いもので文字も小さいし、装幀も悪くはないが現代版の方が自分好みでした(といって自分を慰めたとさ。苦笑)